家づくりの想い
材木屋をしていて
見えたもの
-
創業以来これまで、何百もの建築業者や大工さんと取引をし、何千という住宅建築現場に木材や住宅資材・住宅設備機器を納入してきました。一つの建築現場で最初から最後まで何十回も材料を持っていきます。家づくりで最も大事なところの一つである「構造(土台・柱・梁)」を納めてきました。そして、だんだん家ができていく過程の中で仕事をしています。
すると、一般の人にはわからない建築現場の裏側や、建築業界の特殊事情、建築業者の考え方、お施主様の率直な声も見たり聞いたりします。
「さすが大工さん!」 「素敵な家だな~」 「こんな家に住みたいな~」
と感動する家づくりもあります。 -
「本当にこれでいいの?!」 「お施主様に内緒でいいの?」
「見えなくなるからって、いいの?」
と落胆する現場もあります。そんな現場で、「あんなところに家づくりを頼んで失敗した!」
というお施主様の声も聞きました。
業界特有の悪しき商習慣や、わけのわからない考え方に何度も悔しい思いもしました。材木屋は「家づくりのほんとうのところ」を知っています。
良い業者や悪い業者、良い家づくりや悪い家づくりを私たちはたくさん見て経験してきました。だからこそ、家づくりを担う仕事を始めた以上、絶対にお客様を裏切らない、正しい家づくりをするんだという気持ちを強くもっています。
材木屋ならではの
こだわり
-
私は、大学を卒業した後、大手ゼネコンでの修業を経て、ついに本格的に「家づくり」への道を歩み出しました。ずいぶん前から会社は、「材木屋」から「工務店」へと本業を変えていました。先代が、「材木屋」という立場を生かした家づくりを始めていたのです。
それは、ズバリ木材の流通コストを省いた安価な仕入れによる本物の家づくりです。本物の木のぬくもりと肌触りを知って頂きたい、地域に合った材料で作った家をお客様たちに提供したいという想いからでした。
「家」という、家族の方の想い入れが強いものをつくる仕事は、つらく厳しいけれど、
とてもとても楽しいことと思いました。
忘れられない悔しい思い
-
私は、私なりに彼女の希望に添えるように可能な限りの知恵を使い、努力して提案をはじめました。しかしあるとき、彼女が言いました。
「有名な★★ホームが、○○も△△もついてるのに、予算の範囲に収めてくれるって言うから・・・」有名ハウスメーカーが開いた展示会に参加して、そちらに心が動いてしまわれました。結果、私は彼女に家づくりを託して頂くことができませんでした。
競争の激しい住宅業界ですから、この仕事をしていると、決してめずらしい事ではありません。選ばれなかったのはきっと仕方ないことなのだとして、二人のことを忘れていきました。
-
しかし・・・、
私はその二人の親子が建てている家を、よく目にすることとなってしまったのです。なぜなら、その建設地は会社からの通り道だったから。
それは、家族のためにというポリシーで家づくりを行っているとは、信じられないものでした。いい加減な基礎の造り方、規格住宅という名のもとに出来るだけ簡略化された造り、
何より、安っぽい本体なのに、こじゃれた装備でお得感を出している。本当にそれでいいんだろうか!
家づくりって!?私なら、一生背負っていく借金をしてつくった家があんな不安定な建物ならば、きっと後悔をします。まして、彼女はシングルマザーで人よりも苦労をするかもしれないのです。出来る事ならキャンセルしたい、そう思うでしょう。
-
あれは心のこもった家では、なかった。
「箱」とか、「入れ物」をつくる作り方だった。私が彼女たちの家づくりに携われなかったからと言って恨みをいうつもりはありません。それは仕方のない事なのですから。
でも、二人にあんな家づくりをさせてしまったことがとてもとても、悔しかった。
本当に余計なお世話だけど、彼女たち親子の未来を考えたとき、私は、いい歳して車の中で泣いてしまいました。私は、自分が世界で最高の家をつくっている・・・なんて思っていません。
でも少なくとも、自分という家づくりのプロが、心を込めて真剣にお客様の幸せを考えて家づくりをしている。その点に関しては、誰に対しても胸を張って言える。常にそのために誰よりも研鑚しています。
家族が安心して暮らせる、いい家をつくって欲しい。心の底からそう思いました。
“いい家”の定義なんて、人によって千差万別、100人いれば100通りあるし、家族の数だけ考えかたの違いもあるでしょう。 -
でも、家づくりをする人たちの願いと想いはきっと同じ・・・。
丈夫で長持ちすること。
つかいやすいこと。
美しいこと。
家族が笑顔でしあわせになれる家であること。
これは、きっとどの人も同じ、今までもこれからもきっと変わらないこと。草花にたとえるなら、きっと私は名もない草のような存在かも知れません。ハウスメーカーの様に華々しい話題性もなければ、大きな建設屋さんのようにパァッと目立てるわけでもない。大きな花を咲かせるわけでもない、本当によくある地元の工務店。そう見えるかも知れない。
私は別に、「パァと一花咲かせてやろう」なんて思ってないし、有名になってやろうなんて考えていません。でも私は、この地が好きで、ここに住まう人が大好きです。